沖縄の海 日本の海
新たなフロンティア、海洋は3次元の空間。
地球の海は地表の70.8%を占め、生命の源とも呼ばれています。海の面積は約3億6106万平方キロメートルで、陸地(約1億4889万平方キロメートル)の2.42倍です。平均的な深さは3,729mといわれており、海水の総量は約13億4,993万立方キロメートルにのぼるといわれています。
海には微生物から大型の魚類やクジラ、アシカやオットセイなどの海獣まで膨大な種類、数の(多種多様な)生物が棲息しています。海洋は水循環や放熱としての役割、漁業や資源開発により、人類を含めた陸上の生き物を支える役割も果たしています。
英語では海洋を sea や oceanという言い方で分類しています。日本語でも同様に、海 や 洋 という言い方で分類をしています。太平洋(Pacific Ocean)、インド洋(Indian Ocean)など特定のocean(洋)を指す名称があります。海では「日本海」(英: Japan sea)がありますね。
海は水深でも分類されています。たとえば、浅い海は 浅海 深い海は 深海 です。一般に太陽光がほとんど届かない深度200m以上を深海と呼びます。海の底にも地上と同じように高低差があり、海中の山脈である海嶺や、台地である海台、大洋底に広がる広大な平原である海盆や深海平原、海底でもさらに低い谷となっている海溝など、様々な地形が存在します。
海底にも火山が存在していて、海底火山の中でも特に高いものはしばしば海上に顔を出して火山島となります。火山島ができると領土や領海、排他的経済水域(EEZ)が増えることになります。
地球上の海底で最も深いところは太平洋、沖縄本島から南にあるグアム島のさらに南、マリアナ海溝のチャレンジャー海淵(10,920m)と呼ばれているところです。反対に、大陸の周辺に広がる浅い海(深さ約130mまで)のことを大陸棚と呼びます。
日本の海、その広さは世界第6位
”海は誰のものなのか”という問いはしばしば話題になりますが、政治的には個々の国家ごとに分配が行われているのが現実で、国連海洋法条約によって各国が主権的権利や管轄権を行使できる水域が平面的に区割りされています。そのうち排他的経済水域(Exclusive Economic Zone: EEZ)は、領海の基線より200海里を超えない範囲(外縁)で個々の国家が宣言することができ、そこでは沿岸国が漁業を行ったり資源を開発したりすることに関して排他的な権利を主張することができます。そして、EEZという境界を定めた国連海洋法条約によれば、沿岸国は自らの管轄海域について権益を得ると同時にその管理義務も負うことになっています。
日本の領海及びEEZの広さは国土の約12倍
右図のような二次元地図や、各国の面積世界ランキングはしばしば話題になります。これらの平面的な情報は、一般に世界各国が自国の基礎データのひとつとして調査しており、わが国では海上保安庁が関連公式情報を提供しています。
約38万平方キロメートルの国土面積(領土)に対して、領海と排他的経済水域を合わせた面積は約405万平方キロメートル。ざっと国土面積の約12倍にもなります。
この広さは世界各国と比べると第6位となります。
日本は深海国家?
では、深さではどうでしょうか。
わが国は浅い海から深海まで多様な水域を持っていることがわかっています。深いところは日本海溝(最深部は8,020m)や、沖縄県の東側にも7,507メートルの深さを持つ琉球(南西諸島)海溝があります。そしてわが国の海全体の6割以上が3,000m以深の超深海です。6,000m以深の水域は全体の6%で、その面積はダントツで世界1位(2位ロシアの倍以上)です。※1
面積では世界第6位でしたが、容積では世界第4位となります。
海の深さが均一でないことから、その利用価値や利用可能性は水深によって異なっていて、わが国だけでなく各国のEEZ水域もその海ごとに三次元的な特徴を持っているはずと考えることは不自然ではありません。
海洋は新たな開拓地として、今後も利用開発が活発に行われていくこととなります。その際自国の海洋を、EEZ水域を空間的に把握し認識することは、経済的な利活用、開発だけでなく、海洋の保全というテーマについても必要不可欠となります。
沖縄の海
沖縄県は日本で最も西にあり、南西諸島の島々(沖縄諸島、先島諸島、大東諸島)から構成されています。2019年現在、沖縄県には11市、5郡、11町、19村があり、町は全て「ちょう」、村は全て「そん」と読みます。亜熱帯地帯で生物に好適な気候に恵まれ、貴重な動植物が多くみられます。
おきなわ という地名の由来
「沖縄(おきなわ)」という地名の由来は、「沖あいの漁場」を意味する「おき(沖)な(魚)は(場)」を由来とする説(伊波普猷※2)と、「沖にある場所」「遠い場所」を意味する「おき(沖・遠い)なは(場所)」を由来とする説(東恩納寛惇※3)があります。
沖縄での海とのかかわり
四方を海に囲まれている沖縄では豊富な水産資源(マグロ、イカ、ブリ、タカサゴ(グルクン)、アジ、アカハタなどの他クルマエビ、モズクの養殖など)に加えわが国屈指のリゾート地としてマリンスポーツやダイビング、フライボード、パラセーリング、フィッシングなどマリンアクティビティも豊富で、豊かな自然を感じることができます。
暖かい海
黒潮に乗って赤道付近の暖かい海水が運ばれてくる沖縄の近海は、四季を通して暖かい。海開きは3月頃に八重山地方から始まり、4月には県内各地で行われます。
海水浴は気温の変化にもよりますが、10月下旬頃までできることもあります。年間を通し、マリンアクティビティも充実していて青い海と空を満喫することができます。
幻想的な世界
沿岸ではエメラルドグリーンの海にサンゴ礁と色鮮やかな熱帯魚、少し沖合に出れば群青の海。風や太陽が彩りを加えて幻想的な世界を創り出しています。沖縄には世界的にもサンゴの種類と量が多くあります。パラセーリングでは海の色の変化を眺められ、ダイビングでは目前に広がる幻想的な世界を感じることができます。たくさんの海の生き物に恵まれている沖縄の海は、科学的に重要なだけでなく見る人々に大きな感動を与えています。
重要な沖縄の海
沖縄県は、49の有人島と多数の無人島から成り、合わせると363もの島々があります。海上輸送路(シーレーン)および軍事的要地(第一列島線)として重要な場所に位置しています。その県域は広大で、最東端から最西端までは約1,000km、最北端から最南端までは約400kmあります。
琉球諸島は太平洋側の琉球海溝と東シナ海側の沖縄トラフに挟まれています。琉球海溝はフィリピン海プレートがユーラシアプレートに潜り込むことによりできたものです。また背弧海盆沖縄トラフはユーラシアプレートの海底地殻が引き裂かれて陥没した1000〜2000mの窪みで、海底熱水鉱床などがみられます。
地質的には琉球列島(諸島)のうち沖縄島と奄美大島はケラマ海裂とトカラ海峡とに挟まれた中琉球と呼ばれていて、島は海洋地殻の上に海洋地殻の付加体(海洋地殻の陸側斜面となるユーラシア・プレートの下にフィリピン海プレートが沈み込むときに、海溝の陸側斜面ユーラシアプレートの端に押し付けられて隆起した海洋地殻の上の堆積物)で構成され、さらに3億〜5000万年前の古い付加堆積物で作られる沖縄島北側と、500万年前に作られた現地性堆積物により構成される沖縄島南側に大きく分けられます。
沖縄トラフの海底には国内最大規模の熱水鉱床が広がっていることが確認されていて、に硫化鉱物に含まれる銅、鉛、亜鉛、金、銀などのほか、この他にも微量金属としてビスマス、カドミウム、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、テルル、タリウム、インジウムなどを含む※4ため、次世代の鉱物資源として利活用できるよう研究、技術開発、試掘調査が活発化しています。このことは鉱物資源のほぼ100%を輸入に頼るわが国にとって大変重要なことです。また、その他の海底資源としては、東シナ海の海底に推定埋蔵量約1000億バーレルに上る天然ガスや石油が眠っているという説※5もありました。
※1:松沢孝俊「わが国の200海里水域の体積は?」Ocean Newsletter第123号
※2:東恩納 寛惇(ひがしおんな かんじゅん、1882年10月14日 – 1963年1月24日)は、日本の歴史学者。沖縄県那覇市出身。
※3:伊波 普猷(いは ふゆう、1876年(明治9年)3月15日 – 1947年(昭和22年)8月13日)は、沖縄県那覇市出身の民俗学者、言語学者。沖縄学の父と言われている。
※4:国土交通省「第6章 新たな海洋資源開発へ向けて」p.445)
※5:日中中間線(日本側のEEZ主張ライン)の日本側で、究極可採埋蔵量が5.18億キロリットル(32.6億バーレル)と公表されている。
(1994年(平成6年) 経済産業省 石油審議会開発部会)