社会を支える海の仕事
わが国は四方を海に囲まれ、海から多大な恩恵を受けながら発展してきました。生活に必要な食糧、原油やガスなどのエネルギー資源、工業生産のための鉱物やその他の資源などを貿易でまかなっています。船を使った貿易の量は比率にして99.6%。島嶼県である沖縄県でも海上輸送によって毎日運ばれる物資は99%(貨物の航空輸送と港湾輸送の割合 – 沖縄県)を占め、今を生きる私たちにとって「海」や「船」の存在は欠かせません。
このページでは、現在日本社会を支える海の仕事についてどのような業種や職種があるのか、簡単にまとめました。
海運-船で人や物を運ぶ
いろいろな船
日本と外国との間で船で物や人を運ぶ「外航海運」
わが国は原油、天然ガスなどのエネルギー原料、鉄鉱石などの工業原料、小麦や大豆などの食料を海外からの輸入に頼っています。例えば、原油は99.6%、天然ガスは96.4%、小麦は87%が外国からの輸入です。また、わが国は自動車や電気製品などさまざまな工業製品を生産し、世界に輸出することで発展してきました。外航海運は、こうした外国との貿易の99.7%を担っています。
また、外航客船は、かつては海を越えて人が旅をすることのできる唯一の交通機関でした。航空機の出現により船が外国への移動手段としての役目を終えましたが、代わって登場したのがクルーズ客船と呼ばれるレジャー目的の客船です。
国内の港から港へ貨物を運ぶ「内航海運」
わが国では昔から「北前船」などの船による物資輸送が盛んに行われ、今日では6,000隻余りの内航船が港と港を網の目のように結んでいます。沖縄でも古くは琉球王朝時代の那覇港は、中国を始め朝鮮半島や東南アジアの国々と日本を結ぶ貿易の中間地点として、様々な国の品物や人、文化が集まる国際都市として賑わい、アジアを結ぶ海の交差点として、その影響は多大なものでした。琉球王国6代目の王である尚泰久王が建立した「万国津梁之鐘」には、琉球が中国、朝鮮、日本と進貢し、 シャム、マラッカ、スマトラ、ジャワなど東南アジアと広く貿易を行ったことが記されています。1853年5月26日には、ペリー提督が日本開国の目的で琉球に立ち寄りました。那覇港から上陸したペリー艦隊の一行はその後、那覇港を拠点として、小笠原諸島、浦賀、函館などを訪問し、琉米和親条約や神奈川条約を結びました。
国内貨物の主な輸送機関は、内航海運のほかにトラック、鉄道がありますが、内航海運は、貨物輸送の約4割を担っていて、航海運で運ぶ主な貨物には、鉄鋼製品、セメント、石灰石、穀物飼料、紙、自動車、砂利、日用雑貨、食糧、石油製品、LPガス、石油化学製品等が挙げられます。
内航海運は、産業基礎資材から、生活必需品に至るまで、様々な貨物を運び、「国民生活を支える縁の下の力持ち」として日々活躍しています。
国内を船で人を運ぶ「国内旅客船」
旅客船には、自動車を運ぶフェリー、高速船、水中翼船、一般旅客船などさまざまなものがあります。そのほかに、観光地などでの遊覧船、レストラン船、川下りなどがあり、屋形船、グラスボートなどいろいろな船が使われています。特に離島を結ぶ旅客船は、島で暮らす人たちにとって唯一の移動手段・生活物資の輸送手段として、非常に重要な役割を果たしています。
船乗りの仕事
船長:船の大小、乗組員の多少にかかわらず船の最高責任者。安全第一で乗客、貨物と乗組員を守る
航海士:航海中、交代で24時間各々が決められた時間に甲板部員と一緒に航海当直(見張りや操船など)の業務を行います。目の前の事象に対して責任をもって自己完結、日本の経済を支えているという自負を実感
機関長:船を動かすエンジンをはじめ、さまざまな機械、装置の運転管理などを行う「機関部」の責任者。感覚を研ぎ澄まし、不具合から船を守る
機関士:航海中・停泊中の区別なく、交代で24時間機関室(エンジンルーム)の機械の運転を監視する船もありますが、現代の大型の船では、夜間に機関室で監視をしない体制にする船が大半を占めるようになりました。安全運航を守るため、丁寧な仕事で落ち着いて対応
通信士:通信士は、海技士(通信)の資格を持つ職員。無線電話などの通信機器により陸上との連絡を取り合うほか、機器の整備も担当しています
船舶料理士(コック):乗組員の食事を作る
陸上職技術系:プロジェクトを円滑に進めるための潤滑油
オペレーター:船と陸をつなぐ懸け橋
陸上職事務系:島国日本の生活を裏方で支える重要な仕事
水先案内人:船長職の先にある憧れの職業「水先人」は「無冠の外交官」
海を学ぶ
船乗りになる方法
船に職員として乗り組むためには、船の大きさや種類、航行する区域に応じ1級~6級までの海技資格が必要となります。外航船員になるためには3級、内航船員になるためには4級の資格を取得するのが一般的です。
海技士資格を取得するためには、一定期間、実際に船に乗って運航や実習に従事した経験(乗船履歴)を積むほか、国家試験(学科試験と身体検査)に合格する必要があります。
船員を養成する学校
船員を養成する学校には、海事系大学、商船高等専門学校、独立行政法人 海技教育機構(海技大学校、海上技術短期大学校、海上技術学校)があります。これらの学校の生徒、学生は、独立行政法人 海技教育機構所有の5隻の大型練習船により乗船実習を行います。
外航船員になる!
外航船員になるためには、中学校卒業後に商船高等専門学校(全国5校)に進学する道と高等学校卒業後に大学(東京海洋大学または神戸大学)に進学する道があります。
内航船員になる!
内航船員になるためには、中学校卒業後に海上技術学校(本科)に進学する道と高等学校卒業後に海上技術短期大学校(専修科)に進学する道があります。
奨学金制度
海技教育機関の学生・生徒が安心して学業に専念できるように支援するための奨学金制度があります。詳しくはこちら。
造船
造船営業:幅広い知識と柔軟な適応力で世界を相手に新造船を受注する
造船開発:技術研究
造船設計:より良い船造りの提案、新技術を活かしたものづくり
造船製造(溶接・艤装(ぎそう)・機関):専門技術を駆使した船造り、検査や動作確認も
総合技能(船舶修理:鉄工・機関):船の修繕を通して自分の手で作り出す喜びと驚き
海と船の安全を守る
海事代理士:海の法律を知り尽くし、船と人の架け橋を担う「海の翻訳家」
船舶検査官:船の安全と海洋環境を守るエキスパート
船舶測度官:海事産業の重要な指標を決める
海上保安官:海洋の秩序維持、海難の救助、海上防災、海洋の環境保全、海上交通の安全確保などを図るため、日夜、日本周辺海域において活動しています。
海上保安官になる!
年齢、資格などにより受験資格が異なりますが、海上保安大学校への入学、海上保安学校への入学、海上保安学校門司分校への入校の3つの方法があります。各校ともに入学金、授業料などは不要です。また、給与も支給されます。
海と親しむ-マリンレジャー
マリンレジャーを楽しむ、楽しませるには海のことを学ぶとともにやりたいことによって資格が必要となります。
ボート免許制度(平成15年6月以降)
エンジンを搭載するボートやヨット、水上オートバイを操船するには、ボート免許の取得が義務付けられています。1級、2級、水上オートバイ専用免許の3つの免許があります。
ダイビングライセンス(Cカード)
ダイビングのライセンス、持っていない場合は、潜る前に毎回基本レッスンを受け、さらにインストラクターの補助を受けながら潜るのが通例です。通常ダイビングショップでは、体験ダイビングプランの他はライセンスの提示がなければ、ダイビングの機材のレンタルやタンクの購入ができません。
ダイビングのライセンスは国家資格ではなく、ダイビングスクールなどの民間の指導団体が認定する資格です。正式名称は「Cカード」。Cはcertification(認定)の略で、取得すれば、ダイビングに必要な知識やスキルを習得したことの証となります。
Cカードといっても1つではなく、日本では30以上、海外も含めると40ほどの団体から発行されています。団体によってダイビングのコンセプトや講習の内容が少し異なりますが、同じランクのCカードであれば、団体が違っても取得後にできることに大きな差はありません。
海にかかわる
海のめぐみを支える林業
山は海にとってとても大切な存在です。山は河川を通じて海へとつながっています。山に雨がふり、山の栄養をたっぷりとふくんだ水が川に流れ、海へと流れこみます。その栄養は魚のエサであるプランクトンや海藻の成長にとって欠かせません。海のめぐみをささえるのが「林業」の仕事です。
このほか、海にかかわる仕事として船医、海上自衛隊、特殊救難隊、漁師、ライフセーバー、船上ガイド、ネイチャーガイド、気象予報士、シーアーティスト、水産仲卸業、通関士や水中カメラマン、ドルフィントレーナー、養殖業や水産加工業、海の研究者、技術開発、海洋環境調査などの仕事もあります。
参考
海と日本PROJECT
SEA-GOTO ~海のシゴト ガイドブック~
海の仕事.com
那覇港管理組合
一般社団法人 日本造船工業会
一般社団法人 日本マリン事業協会